isora

南極大陸の氷の下で一枚の金属板が発見された.地表から約3000mの深さで,地下掘削調査の折,偶然見つかったものだった.

20cmx20cmほどの大きさで厚さは1cmほどだった.

その金属板には未確認の文様が刻まれており,何かしらの言語,文字のように思われたが,一致する既存言語は存在しなかった.

その文字は72の規則的に区切られたセルの中に配置されており,文章と言うよりは図表のようだった.

その金属板は科学的解析のため日本のある研究所に送られたが,その解析を担当していた一人の研究者と共に行方を眩ましてしまった.

一連の出来事は,行方不明の研究者の名に因んでisoraと名付けられ,ロシア,日本,米国の一部のみに共有され,以降極秘とされた.

1992年のことである.

 

2007年,あるネットワークストレージに,数メガバイトの一連の数列からなるisoraと題されるファイルがアップロードされた.ファイル共有システムに偶然接続された極東に位置する古い磁気ディスクからアップされたものだと思われたが,ある人物がアクセスしダウンロードした直後,ネットワーク上から消去された. 

 

2017年,isoraと題されたある芸術作品が,アジアのある国で開催された芸術祭で発表された.映像と音響からなるこの作品は,20分の間約100名の観客に披露された.

作者は日本人で,ある国立研究機関に属している人物だった.

その後,観客のうちの3分の2と,作品の発表に関連した関係者10名が変死もしくは行方不明になるという事件が発生する.警察と軍が調査を開始するが,原因は不明のままだった.

事件後の調査で,作者が芸術祭のインタビューで,南極で発見された金属板について言及していたことが判明したが,公式の記録には残されていなかった.