上がる

サッカー界の生ける伝説、三浦知良。彼と姓名の読みが同じということでキング・カズと呼ばれていたミウラくん。

小学校の同級生。内気で、太っていて、マンガとアニメが大好きで、よくいじめられていた。スポーツは全然ダメだった。

彼は、ある体育の時間、サッカーの試合があった時、カズなのにキーパーかよー、まああいつじゃあしょうがねえかーなんて相手チームに言われながら、ゴール前に佇んでいた。彼は走るのが苦手だったし、太ってるし、デカければ壁になるやん、という理由で、ポツンと立たされ、心細げだった。みんなはゴールを決めて目立ちたくて仕方なかったから、ドンドン走って攻めていった。オレにパス出せモード。

当然そんな勇み足が裏目に出て、いきなり相手チームのカウンターを食らってしまった。

相手ストライカーが一気に攻め上がる。ミウラくんと1対1、みんな心底1点取られたと思った。ミウラに止められるわけがない。ため息と歓声が混じっていく。

ボールが遠くなる。

刹那、砂埃がグラウンドを舞った。

ミウラくんは相手のストライカーの足元に飛び込み、ボールを抱え込んでいた。

止めた。

一瞬みんなが固まった。

ただ一人、彼は力一杯そのボールを投げ返していた。どこへ目がけるでもなく、ただ投げた。

 

ワンバウンド、センターライン。

ボールは僕の前にあった。ワントラップして走った。カウンターからのカウンター。

気がついたらゴールを決めていた。

歓声上げてミウラくんの元へ走った。みんなもついてきて、輪になって抱き合った。ミウラくんはとても嬉しそうに、でも控えめに、やった、と言っていた。

楽しかったな。

メディアがサッカーを取り上げるのを目にする度、あの頃のおれたちのキング・カズが砂埃から現れた姿を思い出す。

カッコよかった。