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RAM

赤血球がぶつかり合う音を聴く.

数秒間の出来事で,それは同時に数百万のパターンで現れる.

 

完全な静寂の後,光とともに懐かしい感覚に襲われ,全身の筋肉が弛緩する.

それも数秒間の出来事.

すぐに背中から誰かに持ち上げられるように,意識がはっきりしてくる.

 

現象は常に時間とともにある.

その後,何分か,何十年か,永遠にやってこないか.

 

血液に運ばれた情報のブロックは,数百MB毎ナノマシンに詰め込まれ,脳幹をすり抜け,瞬時に脳のあらゆる領域に定着する.

細かな形状パターンが暗号となって,適切なブロックを適切な領域へ正確に運ぶ.

シナプスの成長と結合を探知するとナノマシンは一斉に情報を流し込む.

そして読み出しが終わるとタンパク質に分解され鉤爪が剥がれ落ち,

血液に運ばれて分解される.

 

ある朝,飛行機が頭上を通過していく音を聞いた.

長く伸び消えていく灰色の塊.

 

その時,全身を,肌を撫でていく禍々しくも美しい記憶.

骨の折れる音,タバコ,カミソリ.

”それは羽虫が耳の横を通り過ぎる音だった”

 

僕はそこにいなかった.