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吸収

電波吸収材というものがある。

その名の通り電波を吸収する素材と形状を持つ材料のこと。同じように、音を吸収する吸音材というものもある。

いずれにしても振動、波、つまりエネルギーの伝播を反射させず、そのエネルギーをそれ自体が吸収する性質がある。

これは人工的な素材に限ったことではない。

雪深い地域では、積もった雪が音を吸収し、無響室に近い環境が自然の中に出来上がることがある。また砂漠でも同じく音が砂に吸収され無音状態となることがある。

無音状態では何が聴こえるのか、という話になると、大体引き合いに出されるのがジョンケージの無響室の話。

ここで彼は体内の音を聴いた、と。神経が稼働している高音と心臓が血液を押し流す低音。つまり、人間にとって無音状態はあり得ない、常に音は聴こえているのだ。という。

本当によくある事例として、イベントとかで現代音楽の話になると、ちょっと佐々木敦の本とかを読んだぺダンスティックなオタクおじさんがドヤ顔で解説してくることが散見される。そしてそこから、無響室はICCにあるよ、とか、自分が無響室にはいったときの体験談を語り始めたりする。

さて、電波はというと、発信源の出力が強くなると吸収材の吸収許容量を超え、吸収材が発火して燃えはじめるのである。吸収されてもエネルギー自体がなくなるわけではないので蓄積していくと均衡が破たんする。

この破綻の瞬間というのは音と人体においても同じく適用可能なはずだ。

均衡が崩れる時、関係性とシステムそのものが適応的に変化する。

そしてあのおじさんたちも燃えつきて灰となるのだ。